Issue 16 / 2026-W41

Safariの遮断で広告の識別が途切れ始めた|報告の数字を支える仕組みを確かめる

広告が届いたかどうかを数える前提は、端末の持ち主、買い物客、AIという自社の外の動きで、契約とは関係なく変わるようになりました。

2026年10月10日更新:The Trade Deskの一部が遮断の対象から外れたこと、iPhoneとiPadのほかのブラウザも対象になることを加えました。

リード

広告の報告資料には、たいてい「何人に届いたか」という数字が入っています。この数字を支えているのは、広告を見た人を、別の場所でも同じ人として覚えておく仕組みです。その仕組みの一部を、広告主でも広告会社でもない、端末をつくる側が止めたと報じられたのが今週でした。

同じ週に、美容用品の買い物客は検討の場所を複数に分けているという調査が紹介され、AI検索の広がりで訪問が減った媒体社は、匿名の訪問者を登録者に変えようとしていることも伝わりました。三つは別々のニュースですが、数える前提が自社の外で動いたという点で重なっています。

今週の示唆

広告やサイトの成果を数える前提は、契約を結んだ相手の外にも置かれています。端末の持ち主が止めれば識別は途切れ、買い物客が別の場所で検討すれば訪問の数字には出ず、AIが先に答えてしまえば訪問そのものが起きません。数字が動いたときは、施策の出来を疑う前に、その数字を支えていた前提が誰のものだったかを確かめる必要があります。

構造を観察する

Safariが、広告のID事業者の一部を配信の段階で止め始めた

AppleのiOS 27は9月中旬に配信が始まり、Safariで一部の広告関連ドメインが遮断されていることが報じられました。Digidayは10月7日、The Trade Desk、LiveRamp、ID5、Permutive、Audigentの名を挙げています。Digidayが多数の広告技術系ドメインを調べたところ、遮断されていたのは最初に挙がった少数にとどまり、LiveIntent、Lotame、ConnectIDは通っていました。

遮断のもとになった変更は、2月にWebKitへ入ったコードだったとPPC Landは伝えています。公開されたコードは初期値が「何も止めない」で、止める対象の一覧はAppleの内部にあります。Appleはこの件で公式な説明をしておらず、Digidayの取材にも期限までに答えていません。The Trade DeskはWebKitの不具合報告で状況を伝え、AppleのWebKit担当者は9月に調査中と返しています。Digidayによると、The Trade Deskの広告を配信する部分は、その後iOSの試験版で遮断の対象から外されました。いまの版を使う人に反映されるのは、早くても月末とされています。

遮断がどこまで広がるかは、まだ確かめられない

AdExchangerは10月2日、WebKitの更新に関わる複数の匿名の情報源の話として、遮断の対象が数百社の規模になりうると報じました。一方でDigidayは、そうした兆候はまだほとんどないと書いています。遠隔で一覧を更新できる仕組みについても、AdExchangerは入ったと伝え、Digidayは更新を待たずに企業を足せるコードがまだ出荷されていないとしており、記事によって書きぶりが分かれています。

ID5の最高経営責任者であるMathieu Roche氏は、この動きをウェブの広告収益の仕組みへの攻撃だと批判し、規制当局の検討を求めました。これは当事者の見方です。確かなのは二点です。止めるかどうかと、その範囲を、数えていた側ではなくAppleが決めていること。そして報道がそろって、公式な説明がないと書いていることです。iPhoneとiPadではほかのブラウザもWebKitで動くため、ChromeなどでもSafariと同じく遮断されると両誌は伝えています。日本の広告主にどこまで当てはまるかは、各社の訪問のうちiPhoneとiPadが占める割合で変わります。今週の報道は日本の数字を示していません。

買い物客の検討は、自社のサイトの外で役割を分けている

Search Engine Landに10月7日、美容用品の買い物客を調べたStella Risingの調査が紹介されました。美容の疑問で最初に開く場所はGoogleが最も多いものの、過半数には届かず、Instagram、YouTube、TikTok、AIツールに分かれます。TikTokで商品を知った人の多くは、あとでGoogleでも検索し直し、TikTokの中で買う人はごく一部でした。

書き手はStella RisingのSEO担当者で、調査の国と調べ方は記事に書かれていません。数字はそのまま使わず、傾向として読むのが妥当です。それでも、発見は動画、確認は検索、購入は別の店と、検討が場所ごとに役割を分けているなら、広告を見た場所と買った場所は、一人の記録の中で結ばれにくくなります。

訪問の外で起きる影響を、媒体社は登録で自社の記録に戻そうとする

Search Engine Landの10月8日の寄稿で、Kevin Indig氏は、AIの影響が訪問の前か、訪問なしで起きると指摘しました。そのため2027年の計画は、訪問の数ではなく、露出、行動、成果の三つの信号を並べて立てることを勧めています。引用されたデータは未確認なので、ここでは主張の形だけを紹介します。

Digidayの同日のMedia Briefingによると、AI検索で参照が変わるなか、媒体社が登録壁を見直しています。The Vergeは10月中に一部の読者へ登録を必須にする予定です。広告の単価が登録者で高まるという発言もありましたが、発言者は匿名の1社で、一般化はできません。ただ、訪問の数が当てにならなくなった媒体社が、識別できる関係を自社の記録として持ちに行っていることは確かです。

企業やブランドにとって何を意味するか

顧客の不安

利用者は、自分の端末の中で広告の識別が止まっても、気づく機会がありません。企業側の不安は逆で、これまで見えていた到達の数字が、理由の分からないまま細っていくことです。

価値認識の変化

到達した人数という数字の価値は、数える仕組みが誰のものかで決まるようになりました。訪問の回数よりも、一人ひとりを結びつけて覚えておける関係を自社が持っているかどうかが、数字を裏づける力になり始めています。

届け方・接点

検討が場所ごとに分かれるなら、広告を出す場所だけを増やしても、結果は一人の中で結ばれません。会員登録、購入、問い合わせなど、自社の側で一人を覚えておける接点が、複数の場所の検討をつなぎ直す場所になります。

事業・ブランドへの意味

価値が顧客に届く構造は、広告の出し先だけでなく、届いたことを確かめる記録まで含めて組み立てる必要があります。確かめる記録を外部の識別に預けた状態では、端末の更新ひとつで事業の判断材料が欠けます。

今週の視点

来週の運用会議までに、いま報告している広告やサイトの数字から三つを選び、それぞれの横に「この数字を支えている仕組みは誰のものか」を一言書いてみてください。自社のものが一つもない数字には、会員、購買、問い合わせのどれで言い直せるかを一行だけ足します。まず、自社の計測でiPhoneとiPadからの訪問が全体のどのくらいを占めるかを確かめると、今週の報道が自社にとって遠い話か近い話かが分かります。

本シリーズの情報収集・構成・編集・公開工程には、AI(Anthropic社のClaudeやOpenAI社のChatGPTなど)を使用しています。命題の設定、編集・検収基準はThree Plus Six LLCが設計し、最終的な判断と公開責任は森浩昭が担っています。

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